2010/02/19

"The Misanthrope" (2010.2.17, Comedy Theatre)


Knightly Can Act!!
"The Misanthrope"
観劇日: 2010.2.17 19:30-21:40
劇場: Comedy Theatre

演出:Thea Sharrock
原作:Molière
脚本:Martin Crimp
美術:Hildegard Bechtler
衣装:Amy Roberts
照明:Peter Munford
音響:Ian Dickinson for Autograph


出演:
Damian Lewis (Alceste, a playwright)
Keira Knightley (Jennifer, an American film star)
Dominic Rowan (John, Alceste's friend)
Tara FitzGerald (Marcia, an acting teacher at Juliard)
Tim McMullan (Covinton, a ctitic)
Kelly Price (a tabloid journalist)
Chuk Iwuji (an actor)
Nicholas Le Prevost (an agent)

☆☆☆☆ / 5

Keira KnightleyとDamian Lewisという2大スターが出るという鳴り物入りの公演。特に舞台の洗礼を受けていないKnightleyがどれ程舞台で力を出せるか、観客も批評家も注目していたと思う。そしてその結果は、"She can act!"と誰かが書いていたが、その通りだった。最初出てきた時は、台詞を聞いた途端、これじゃ舞台では声が細すぎる、と思ったが、嫌みな性格で浅薄なハリウッド・スターを、キーキーと軋むような金切り声と、うるさい女子高生みたいな身振りでで巧みに表現して、実に真に迫っていた。Knightley自身がハリウッド・スターであるために、実像とステージ上の虚像が重なって、一層効果的だった。但、彼女のやるJenniferは、ただ皮相なだけでなく、Alcesteに惹かれることから見ても、芸能界の醜さにうんざりもしているのだが、しかし、俗物たちからあこがれの目で見られ、名声の魅力からも逃げられもしないジレンマを抱えたかなり屈折した人物である。

Martin Crimpの脚本はモリエールの作品を英訳しただけでなく、設定を現代に置き換え、登場人物の名前も変え、おそらく台詞も大分変えてしまったと思うので、モリエールに基づいたCrimpの翻案戯曲と考えた方が良いかも知れない。モリエールを良く知っている人には不満に思えるかもしれない。しかし、モリエールの原作を見るとどういう感じか分からない私には、これはこれで大変面白く見ることが出来た。

現代の薄っぺらい刹那的な芸能界、セレブリティー・カルチャーにうんざりしている劇作家のArceste(Damian Lewis)。しかし、彼はその芸能界の女神たるJennifer(Keira Knightley)を愛していて、芸能界からなかなか逃れられない。ということは、つまり彼自身も、Jenniferを通じて、自分が毒づいている虚栄の世界の奴隷になっているという矛盾を示している。彼らの家には、気取った批評家のCovinton、タブロイドの記者、プロデューサー、エイジェント、役者や、演劇学校の教師などが、有名人のJenniferの回りに、砂糖に群がる蜂、いや、名声という腐臭に引きつけられるゴキブリの如くに集まってくる。東洋風の洒落た絵画の描かれた居間だが、これらの人物により、醜いゴミためのように見えた。Alcesteは彼らに向かって毒舌を吐くが、それはひたすら空にこだまし、彼はただ孤立するばかりだ。彼は愛するJenniferと共に、都会の虚飾を離れ、今の生活を捨てようとするが、Jenniferからは手厳しい反応を受ける・・・。

Knightleyは、「期待を裏切って」なかなか上手かったが、他の役者も絶妙だった。AlcesteのDamian Lewisは現実離れした理想主義を上手く表現。批評家CovintonをやったTim McMullan、薄っぺらい俳優役のChuk Iwuji、ころんでもただでは起きない芸能記者のKelly Priceなど、この世界に集まる人種を皮肉に表現していた。つまるところ、彼ら皆、俳優として実生活でよく知っているタイプの役をやっているわけであるから、上手くて当然と言えば当然。

最後の三分の一くらいは、Arcesteたちの部屋でのコスチューム・パーティとなり、Alcesteを除く皆がモリエールの時代の衣装を着て現れるという興味深い設定。カラフルでとても楽しい。モリエールの時代も今も、こういうセレブリティー・カルチャーの馬鹿さ加減は変わらないということか。

Crimp版は大いに楽しめたが、これを見て、日本語でも英語でも良いから、是非モリエールの原作に忠実な舞台を見てみたいと思った。

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