"The Duchess of Malfi"
Vaulting Ambition公演
観劇日:2010.4.24 14:00-16:40
劇場:The New Players Theatre (Charing Cross)
演出:Dan Horrigan
脚本:John Webster
美術:J. William Davis
照明:Phil Spencer Hunter
音響:Seb Willan
振付:Hannah Kaye
サーカス:Tim Lenkiewicz
出演:
Tilly Middleton (The Duchess)
Andrew Piper (Cardinal, her brother)
Alex Humes (Ferdinand, her brother)
Peter Lloyed (Antonio, the Duchess' husband)
Steph Brittain (Cariola, the Duchess' maid)
James Sobol Kelly (Bosola, a spy sent by the Duchess' brothers)
Tim Daish (Delio, Antonio's friend)
Alinka Wright (Julia, Cardinal's mistress)
☆☆☆/ 5
チャリング・クロスの駅の下に劇場があったなんて、これまでまったく知らなかった。そのNew Players Theatreという始めて行った劇場で、ほぼ無名の劇団(と思う)Vaulting AmbitionによるJohn Websterのステュアート朝復讐悲劇の傑作、"The Duchess of Malfi"(『モルフィ侯爵夫人』)を見ることが出来た。テキストでは大昔、読んだと思うが、多分ステージで見るのは始めて。セミプロの劇団で、公演の説得力にはかなり問題があるが、この作品を実際に見られただけでも行った甲斐はあった。
モルフィ侯爵夫人は若い未亡人。2人の兄、Cardinal(枢機卿)とFerdinandがいる。Cardinalは冷血、冷徹な策謀家、Ferdinandは血の気が多く、すぐ怒り狂う。2人ともモルフィ侯爵夫人が再婚し、一族の財産が他の手に渡ることをひどく嫌って、侯爵夫人に自分達の友人の新しい夫を押しつけようとしている。ところが、婦人は自分の召使いで、善良なAntonioをみそめ、強引に彼を説き伏せ、兄たちには秘密裡に結婚する。CardinalとFerdinandは妹を監視させるために、地位や財産のためなら何でもやるというBosolaをスパイとして侯爵夫人の家中に送り込む。侯爵夫人は3人の子をもうけ、Antonioと平和な時を過ごしているように見えるが、ついにBosolaは2人の関係の動かぬ証拠を手に入れる。CardinalとFerdinandは、Bosolaを使い、愛する2人、そして彼らの3人の子供を殺害しようとするが、自分達にも悪行の報いが訪れる・・・。
チラシによると、1930年代のサーカスの一座の人々をめぐるドラマという設定にしてあると言う事だ。確かに最初や、インターバルのあとにそれを専門としている人が出てきて、いくらか簡単なアクロバット芸を見せてくれるし、Bosolaはピエロのようなメイクアップ、侯爵夫人を演じたTilly Middletonは空中ブランコの女性スターのようなコスチューム。発想は悪くないとは思うが、しかし、台詞はJohn Websterのオリジナルそのままであるので、かなり無理があったと思う。また、今回のプロダクションは、マイナーな劇団のもので、俳優も多くはセミプロの人だと思う。やはり音楽やコスチュームも貧弱で、十分に濃密な雰囲気を出すに至っていない。台詞はしっかりしていたが、それを充分味わい、詩的な美しさを感じさせるほどに操れる人はほとんどいない。その中では、Cardinal役のAndrew Piperが良く響く声で堂々とした台詞回しで、ベテランの貫禄を見せ、目立って良かった。また、BosolaのJames Sobolのずる賢さ、FerdinandのAlex Humesの手に負えない激情ぶりも印象に残った。DuchessのTilly Middletonは、台詞には難はないが、残念ながらカリスマに乏しく、この女性をめぐって多くの血が流されるとは思えない感じである。2008年の秋、Menier Chocholate Factoryで、やはりWebsterの傑作復讐悲劇、"The White Devil"を見たが、その時のヒロインを演じたClaire Priceの圧倒的な迫力と比べてしまった。"The Duchess of Malfi"も、"The White Devil"同様、全員のテンションがどんどん高まり、人々が激情に押し流されて、狂気と殺戮の結末へと疾走する劇のはずなのだが、何だかそのテンションが高まらなくて、ゆっくりと進むように感じられた。とは言え、この劇団にウエストエンドの大劇場やナショナルのレベルを期待するのは気の毒。
星はセミプロ劇団であることを考慮し、原作の面白さを加味して、3つとしました。劇場は250人くらい入りそうな場所ですが、お客さんは30人程。かなり寂しい。役者さんに気の毒でした。前の方に固まって座っている少数の観客に向けて演技をしているセミプロの役者さん達を見ていること、公演自体が、まるでドレス・リハーサルのような寂しさ。劇場にはやはり沢山の観客が必要だと痛感。
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