2010/04/16

"The Power of Yes" (National Theatre, 2010.4.15)

2回目、見ました
"The Power of Yes"
National Theatre公演
観劇日:2010.4.15、  14:15-16:00
劇場: Lyttelton, National Theatre

☆☆☆ / 5

演出:Angus Jackson
脚本:David Hare

David Hareの新作が今度の週末で終了するので、もう一回見ました。この劇は、昨年の11月に既に見ており、その時の感想はこちらにあります。劇作家としても、一人の知識人としても、David Hareの作風を大変好み、彼を尊敬さえしている私としては、切符も買いやすいことだし、もう一度見たかったのです。彼は現代イギリスの良心ですね。劇としては、やはりそれ程説得力がなく、☆は前回と変わらず3つ。なかなか劇になりにくい、金融危機の解剖というテーマに正攻法で取り組んでいます。どうやっても、大きな説得力を持つのは難しいでしょう。それを考慮すると大変良くできていると思います。最後のところで、Royal Bank of Scotlandの頭取アラン・グットウィンをやり玉に挙げてかなり時間をかけて批判したところなど迫力があったので、もう少し取り上げるポイントを絞ると良かったかな、と思いました。しかし、Hareの意図は、金融危機の全体像を捉えたかったんでしょう。

投資家ジョージ・ソロスを演じたBruce Myers、若い経済ジャーナリスト役のJemina Rooper、劇中でHare自身を演じたAnthony Calf、不動産ローン会社の重役のRichard Corderyなど印象に残った俳優です。しかし、最初見た折の感想にも書きましたが、Claire Priceの迫力が何と言っても素晴らしかったですね。Anthony Calfは私の好きな役者ですが、先日見た"White Guard"にも、傀儡政権の首班Hetmanの役を好演していました。


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3 件のコメント:

  1. ご無沙汰しております、BPです。2月に渡航した際、これを観ました。Enronも観ましたが、私はエンターテイメント化されたEnronよりもこちらの方が好きでした。特に、ほとんど一年しか経っていない生の現実に切り込んでいる新鮮さというかダイレクトに生活につながっている点が素晴らしいと思いました。出だしの、This is not a play. This is a story.(ちょっと違っているかも?)というところからもうぐっと惹き付けられました。

    日本ではなかなかこういう生の社会問題に取り組んだ芝居が現れません。永井愛の二兎社が世田谷パブリックで今上演している「かたりの椅子」は、新国立劇場の芸術監督問題を素材としているようです。明後日観に行くのですが、設定自体は虚構化しているようです。PKO問題を扱った「だるまさんがころんだ」を上演した燐光群は最近あまり社会問題に切り込みません。ただ5月にはこのPower of Yesをいち早く上演するようですが。(燐光群はデビッドヘアの最近作をいくつか上演していますが私はパーマネントウェイ以外は未見。)

    小泉「劇場」や民主党への政権交代、ホリエモン事件などはなかなか芝居になりませんね。日本にはデビッドヘアはいないということでしょうか。

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  2. 連投失礼します。役者としては、私はジョージ・ソロス役の方の重厚さが一番印象に残りました。ソロスと言えば少し投資を勉強した人なら誰でもが知る人で、まさに本物を知らなくてもああいったイメージを与える人物です。ヘア本人らしき劇作家が最後にソロスとさしで話し合う場面は非常な緊張感がありクライマックスにふさわしいと思いました(最後の長いテーブルの場面、相手は確かソロスでしたよね?)。

    観客も印象的なセリフが出るとうなづいたり、うーんとうなったりと真剣に観ている感じがひしひしと伝わってきました。自分たちに関係のある出来事についての意見を聞き考えている、と言った風でした。英語で観客はオーディエンス。その意味を考えさせられました。

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  3. BPさま、お久しぶりです。コメントありがとうございます。

    ヘアの作品は大好きなので、2度も見てしまいました。BPさんも楽しまれたようで、良かったです。ソロスと作家の対話のシーンはおっしゃるように説得力があったし、本文でも触れましたように、ソロスを演じたMyers、大変印象的でした。

    劇としては、やはり『エンロン』のほうが多くの人に受け入れられたとは思います。でもこのような劇が日本でも出来て欲しいものです。しかし、日本にこの劇を翻訳して持っていってどうするのかなあ。それより、日本の経済危機の現実を扱った本を書いて欲しいですね。ヘアのような作家なら、政権交代だって、ホリエモン事件だって、劇にすると思いますけれど。日本の銀行倒産なども、その背後に見える人間ドラマは充分劇になる素材だと思います。ただ、そういうことを書ける作家や、やる劇団、劇場、そして何よりも、それを見る観客がいないのが致命的ですね。 Yoshi

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