2011/08/16

"Blue Surge" (Finborough Theatre, 2011.8.13)

崩れたシンデレラ物語
"Blue Surge"

Finborough Theatre公演
観劇日:2011.8.13  15:00-17:10
劇場:Finborough Theatre

演出:Ché Walker
脚本:Rebecca Gilman
セット:Georgia Lowe
照明:Neill Brinkworth
音響:Edward Lewis
衣装:Rachel Szmukler

出演:
James Hillier (Curt. a policeman)
Clare Latham (Sandy, a prostitute)
Alexander Guiney (Doug, a policeman)
Kelly Burke (Hether, a prostitute)
Samantha Couglan (Beth, Curt's girl friend)

☆☆☆ (3.5程度) / 5

ハリウッド映画で、ジュリア・ロバーツがコール・ガールをやった『プリティー・ウーマン』という馬鹿馬鹿しいシンデレラ物語があったが、ちょっと似たところがあるが、シンデレラ物語はやはり夢物語、だと知らせてくれるようなストーリー。脚本は2001年の作品。

Curtと同僚のDougはアメリカ中西部の地方都市の白人田舎警官。ある時、売春を行っていると疑われているマッサージ・パーラーを捜索し、それが縁でCurtはSandyという売春婦と関わり合いになる。彼は、身寄りもなく住むところもない彼女を何とか今の惨めな状況から救い出したいと必死になる。Sandyに助力をするうちに、そのことが自分が付き合っていた美術の先生のBethに知られて彼女を怒らせ、更にDougのアドバイスに反して、仕事を犠牲にしてもSandyをかばって、最後には警官の職を失ってしまう。

SandyはCurtに頼ろうと意図していたわけでなく、彼と関係を持って警官の好意を買おうとしたわけでもない。実際、彼は行き場のなくなった彼女を自宅に泊めるが、二人の間には肉体関係はない。

一方、ミドルクラスの出身で、上品な美術教師のBethは、Curtに教養をつけさせ、また警察機構の中で順調に出世して欲しいと、色々なアドバイスをするが、Curtはそれについていけない。彼はどうしても彼女との育ちと教養の差を感じてしまい、例え彼のキャリアを危うくしても、Sandyの手助けをすることで心の安らぎを得る。

サブ・プロットとして、Dougと、やはり売春婦だったHetherの関係が描かれるが、こちらはそつなく世渡りをするDougと彼の子供を妊娠し幸せそうなHetherが、救いようのないCurtとSandyとは対照的に描かれる。メイン・プロットの二人の不幸と比べ、こちらは『プリティー・ウーマン』なみの安易な筋書きという気はするが、軽薄だがしっかり計算だけはして生き残るこの2人のコミカルなところが、劇全体の陰鬱なトーンをやわらげている。

アメリカの白人階級社会の様相を上手く劇化した作品。アメリカ人は、イギリス人よりも、個人のより内面的で文化的な部分における階級の差を感じることが多いのかも知れないと思った。

俳優の演技は秀逸。特に主役の2人の絶望感は良く伝わってきた。ただ、費用のかけられないフリンジの劇場なので、セットが貧弱なのが残念。マッサージ・パーラーにしろ、警察署やCurtのアパートにしろ、費用をかけたセットを作ってアメリカ中西部の田舎町らしい雰囲気を濃厚に出せれば、格段に良くなったことだろうと惜しまれる。今後、他の劇場でも再演されることを望みたい。

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