『アテネのタイモン』
劇場:埼玉芸術劇場
観劇日:2017年12月28日 13: 30—16: 15
☆☆☆☆ / 5
12月28日、久しぶりに埼玉芸術劇場へでかけ、蜷川亡き後の初めてのシェイクスピア・シリーズの上演である『アテネのタイモン』を見た。年の暮れでバタバタしてあまり時間がないので、簡単に感想をメモしておく。
まずは非常に楽しめたと言っておきたい。始めて見たし、脚本も読んでおらず、粗筋さえ知らなかったのが、こんなに面白い劇とは思わなかった!イギリスののロイヤル・シェイクスピアやナショナル・シアターで、ラッセル=ビールやペニントンが主演した公演を見た人の話では、善人過ぎるあまり見境なく他人の為に浪費してしまう主人公の、同情さえ感じる哀れな結末、という印象だったそうだが、吉田鋼太郎演じるタイモンは浪費家の自業自得と言える破滅、という印象を与えたし、意図的にそういう風に演じていると感じた。
人生の意味を知らない魂が、様々な誘惑や偽りの友人に囲まれてひとときの栄華を誇るが、やがて当然の報いがやってきて、苦難や裏切りを経て、死へと向かう。これは、ユニバーサルな魂の遍歴の物語とも言え、正に中世道徳劇のテンプレートを踏襲していて、非常に分かりやすい。現代の経済バブル、そしてその破綻と重なるところは、ルーシー・プレブルの『エンロン』を思いだした。
最後の場面が典型的だが、座長が前へ前へとしゃしゃり出て劇全体のバランスが壊れているように見える。これが主役と演出家が同一人物の公演の限界か、あるいは吉田さんの問題か?台詞は概して大声で怒鳴りすぎの場面が多いが、これもまた、演出家が客席で指揮をしていないことから来る欠点では?柿澤勇人の武将は精一杯の力演だったが、人生を賭けて怨念を晴らすこの重要な将軍の役には余りに若いのではないかと思った。横田さんがやったら、もっと説得力があっただろうなあ。とは言え、最初に書いたように、充分楽しめた公演だった。
分かりやすい、劇画やアニメ風とさえ言えるのが蜷川幸雄のビジュアル面の舞台作りだと思うが、美術や音楽は、蜷川・タッチをやや押さえつつ踏襲している感じがした。特に新奇な点は感じなかったが、効果的だったと思う。
吉田さん、次は『ヘンリー5世』ということだが、1年以上先。人気者過ぎてスケジュールが一杯なんだろうけど、年に1回しかやらないのが本当に残念。2回やって欲しい!
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