2013/08/27

Luigi Pirandello, "Liolà" (National Theatre, 2013.8.26)


シチリアとアイルランドの田舎の物語
"Liolà"

National Theatre公演
観劇日:2013.8.26   19:30-21:00 (no interval)
劇場:Lyttelton, National Theatre

演出:Richard Eyre
脚本:Luigi Pirandello
翻案:Tanya Ronder
デザイン:Anthony Ward
照明:Neil Austin
音響:Rich Walsh
音楽:Orlando Gough
振付:Scarlett Mackmin

出演:
James Hayes (Simone Palumbo, a landowner)
Lisa Dwyer Hogg (Mita Palumbo, Simone's wife)
Rosaleen Linehan (Gesa, Mita's aunt)
Rory Keenan (Liolà)
Charlotte Bradley (Ninfa, Liolà's mother)
Eileen Walsh (Càrmina)
Aisling O'Sullivan (Croce Azzara)
Jessica Regan (Tuzza Azzara, Croce's daughter)

☆☆☆ / 5

私は何も知らないが、ルイジ・ピランデルロは20世紀前半のイタリアの生んだ世界的作家。この作品はこれまであまり上演されてこなかった作品のようである。今回のTanya Ronderのバージョンがどのくらい原作に忠実かどうかは分からない。イギリスで外国の劇を取り上げるときには、かなり大幅な改作がなされ、翻訳と言うより、翻案と呼ぶべき台本が多いので、相当に変えられているのかも知れない。脚本の改変ではないが、特に大きな違いを生んだのは、場面設定をアイルランドとだぶらせたこと。俳優をアイルランド人にするか、ないしはアイルランド訛りを話させて、半ばアイルランドの田舎の物語にしている。その結果、イギリス人の観客にはより身近に感じられるかも知れないが、私にとっての実際上の問題点として、台詞が非常に分かりにくくて、筋を追えないところが多く、あまり楽しめなかった。

場面設定は1916年の夏、シチリアの田舎の村。移民、あるいは出稼ぎのためだろうか、男達がほとんどいない。残っている男は、60歳代の大地主、Simoneと、若いプレイボーイのLiolà。Simoneは若い妻MItaはいるが子供が出来ず、跡継ぎがいなくて焦っている。一方、能天気なLiolàは村の多くの娘と関係を持ち、3人の息子を作り、その息子達は彼の母親Ninfaが育てている。更に彼はTuzzaという娘を妊娠させてしまうが、この娘はSimoneの若いいとこだった。そこでSimoneはTuzzaの赤ん坊を自分とMitaの子供として貰い受けるというアイデアを思いつく。しかし、この、夫に都合の良いプランに簡単に同意できないのが妻のMitaである。妊娠が出来ないのは彼女のせいでは無く、夫のSimoneが歳を取りすぎているからだが、まるで自分に責任があるかのように見えるのも腹立たしい。そこで、彼女は、元々彼を慕っていたLiolàと関係を持って自分の子を作ることにする。SimoneとLiolàは2人の妊婦に挟まれて困った立場に追い込まれる。

と言うような筋書きだそうだが、見ている間、特に中盤はあまり分かってなくて、うとうと。帰宅後ネットで調べて、なるほど、と思ったりしている体たらく。アイリッシュ・アクセントにやられた。それに時代背景や作家のことが全く分かってないのも良くなかった。プログラムも買ってなかったが、買って少しでも読んでおけば良かったと思う。

登場人物の置かれた立場、特に、貧しくて男達が村を出ており(アイルランドと同じ)、封建的・家父長的な社会の中、女性達は気の毒であり、悲しいお話である。しかし、Pillandello、そして特にRichard Eyreの演出意図は、そうした状況の中でも逞しく生きる女性達のエネルギーを讃えることだろう。全体に明るく、コメディータッチで、歌やライブ・ミュージックがふんだんに使われいて、半ばミュージカルみたいな時もあった。作品の内容、演出家の意図や場面設定、笑いと悲しみが入り交じった雰囲気等々、フリールの"Dancing at the Lughnasa"を彷彿とさせた。但、この劇はあくまで明るく、あれほど繊細でも、感動的でも無かったが。

Anthony Wardのデザイン、Orlando Goughの音楽、そして常にステージの一角を占めていたミュージシャン達が、シチリアの明るい風土を上手くかもし出していた。

時間が1時間半という小品で、食い足りない感じがした。オフウエストエンドのアルメイダとか、フリンジなどだったら、かなり満足できただろうが、National TheatreのLytteltonでの演目として選ばれるのに適切かどうか、やや疑問を感じる。但、スポンサーのTravelexの補助のおかげで、私の席はとても見やすかったが、たったの12ポンド(約1500円)!リビューはかなり良く、「思いがけない傑作」などの評価もあった。私ももう少し台詞の英語が分かればずっと面白かっただろうに、と悔しい。

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