2009/12/28

New Marlowe Theatreの新築現場(2009年12月)



工事現場


完成予想図


今はない旧Marlowe Theatre



現在活躍中のカンタベリー生まれの有名人と言うと、ハリウッド・スターのオーランド・ブルームでしょう。しかし、歴史的には何と言ってもクリストファー・マーロー(Christopher Marlowe, 1564-93)を挙げたいところです。彼はシェイクスピア、ベン・ジョンソンと並ぶ、イギリス・ルネッサンス演劇最高の劇作家で、代表作に『フォースタス博士』、『マルタ島のユダヤ人』、『エドワード2世』などがあります。生まれたのはシェイクスピアと同じ年。カンタベリーの慎ましい靴屋の息子でした。現在も名門校として知られる地元のKing's Schoolに通い、才能を認められ、ケンブリッジ大学のコーパス・クリスティ・コレッジにカンタベリー大司教Matthew Parkerの奨学金を得て進学しました。その後ロンドンで劇作家としてめざましい活躍を始めましたが、同時に政府のスパイとしても活動したとされている謎の人物。29歳でロンドン郊外のDeptfordの酒場で喧嘩の末、殺害されましたが、政治的暗殺であったという説も有力です。作風は極めて過激。破壊的なエネルギーとアイデアに溢れています。色々な混乱を経ても、万事がキリスト教倫理に収斂されるシェイクスピアの世界とは一線を画しています。ホモ・セクシュアルであったことも、作品から明かです。

さて、そのMarloweの名前を冠した劇場が、2009年春までカンタベリーにはありました。しかし、平凡な地方劇場という感じで、子供向けのパントの上演など、それなりに地域の役にはたっていたと思いますが、たまに演目をチェックしても、私が入場料を払って見たい公演はまずありませんでした。カンタベリーがロンドンに近すぎて、観客が集まらないという面も災いしたと思います。

しかし、この旧Marlowe Theatreの建物は現在解体され、新しい、本格的な劇場が建てられつつあります。2009年の3月に旧劇場の建物が壊され、その後敷地内の考古学調査が行われた後、現在新しい建物が建設中です。完成は2011年9月。なお、劇場の建物はありませんが、ツアー公演としてMarlowe Theatreの名前を冠した公演は行われています。

その新しい劇場ですが、1,200人収容(!)のメイン・オーディトリアム、それとは別に小劇場、そして各階のバーや川辺のカフェ、広いロビーなど、もの凄い、大がかりな建物です。今回これを書くにあたり、収容人数を確認してみて仰天しました。1,200人というと、イギリスの劇場でも最大規模。大体、ナショナルのオリヴィエがその位の大きさでしょう。それを一杯に出来るのかしら?心配になってきました。カンタベリーの町だけでなく、広く地域全体から観客を集める必要があります。しかし、それだけの劇場ですから、イギリスでも最高のツアー公演を持ってくると思いますので、RSC、National Theatreその他のツアーが頻繁にカンタベリーで見られることになるでしょう。そう言えば、イギリス南東部は、ロンドンに近すぎることもあり、拠点となるような有名な地方劇場がありませんので、Marlowe Theatreがその役を果たそうとしているのでしょうね。閑古鳥が鳴き、潰れないと良いのですが・・・。何しろ、日本の箱物同様、バブルの最中に計画された新劇場ですから、心配!

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